PDの解説のページです
パーキンソン病の a、病態は、黒質の脱落によるドパミン欠乏が原因の疾患です。 b、特徴的身体所見としては、運動症状:いわゆる「4徴候」というのがあります。
c、鑑別のポイントですが、特殊なものとして、家族性や環境因性のものもありますので、確認しておきます。
最も重視するのは、3の病歴で、緩徐進行である、というものです。
いわゆる、4徴にふくまれる運動症状以外には、4の非運動症状というのがあります。
臨床的に問題になるのは、認知症の有無なので、これを聴取します。
5の補助診断ですが、最近では、DATスキャンやSPECTといったRI検査を有効に使うことで、パーキンソン症候群との鑑別が可能になってきているので、入院中に検査することが多いです。
d、標準治療についてみてみましょう。 パーキンソン病は、他の疾患に比べると、治療選択肢が多いため、記載が多くなっています。 1の内服治療のところですが、①と②のセクションがあります。 臨床的な状況で分けると、①の早期患者が「最初の治療を何にするか」についてのもので、②の前半の①~③は、効果が不十分ならどうするか、について、後半の④~⑤は、治療による副作用が出たらどうするかについての記載です。 これらの内服の選択に関しては、パーキンソン病治療のガイドラインが出ていますので、最初は、ガイドラインのフローチャートにそって理解してゆくとよいでしょう。
ここでは、パーキンソン病の最初の治療をどうするか?という問題についてみてみましょう。
右にあるのが、ガイドラインの中にあるフローチャートです。
パーキンソン病の運動症状の治療は、L-ドパとドパミン受容体刺激薬(DA)が中心となります。
どちらから始めるのがよいのか、という問題については、ガイドラインでは、大きく、年齢で分けています。
フローチャートに沿って行くと、おすすめの薬がわかるようになっています。
ただ、使いこなすには、どうしてこうなったのかについてのある程度の知識が必要です。
この表は、Lドパとアゴニストの特徴についてのまとめです。PDの治療は、この2種類が中心となります。 上の表のように、Lドパ製剤は、効果が確実な反面、早く切れることや、長期的にはジスキネジアの問題を起こすことがあります。 一方、ドパミンアゴニストは、効果はマイルドなのですが、長期的にジスキネジアが出にくいという長所があります。その反面、高齢者で幻覚をおこしやすい、古いタイプのアゴニスト、いわゆる麦角系には弁膜症の問題があります。 以上を踏まえると、若い方はアゴニスト、高齢者はLDOPAというのがガイドラインのお勧めになります。 若い方は、ジスキネジアが、高齢者は幻覚が副作用として問題になるからです。
ここでは、ドパミンアゴニストの中での分類についてみています。
いわゆる「麦角系」に分類される、古いタイプのアゴニストは、長期的に心臓弁膜症の問題があります。心臓弁膜症の問題は、発売されてからしばらくしてから明らかになったため、昔から飲んでいた人は、なにか理由がない場合は、次の非麦角系にスイッチされました。また、今日では、麦角系は、あまり第一選択にはなりにくくなりました。
非麦角系は、心臓弁膜症の問題はないので、第一選択になりやすくなりました。ただし、突発睡眠といって、急に眠ってしまう、という副作用が知られています。
上記の理由から、車を運転しない、ICD歴(衝動制御障害=病的賭博、買いあさり)がないという方には、非麦角系、車の運転をしたり以前からの麦角系でうまくいっている方は麦角系という選択がされることが多いです。
ただし、麦角系を選択した場合は、定期的な心エコーのフォローが必要になります。
ここでは、パーキンソン病の内服を始めたが、「効果が不十分である」場合どうするか? 「効果が不十分」というのは、wearing offといって、「薬切れの時間ができてしまう」場合を指しています。 ガイドラインをみると、LDOPAの投与回数を増やすこと以外に、効果がある時間を延ばす内服として、エンタカポン、MAOB阻害薬などを追加することが提示されています。 なお、wearing off以外には、no on, delayed on=飲んだのに効かない On-off=wearing offと違い、内服時間関係なく急に動けなくなる といったoff現象も知られています。この場合は、Ldopaを適宜追加するなどといった対処をすることが多いです。
wearing off対策で追加される薬についてみてみましょう。
いずれも、on時間延長目的で併用されます。
COMT阻害薬は、LDOPAとの併用で使用できます。MAOB阻害薬は、単独でも使用可能です。
これらは、効果は比較的強いですが、その反面、ジスキネジアが出ることがあります。
一方、ゾニサミドやイストラデフィンは比較的効果がマイルドですが、ジスキネジアは出にくい傾向にあります。
②のwearing off以外のoff症状の用語についても見てみましょう。 no on, delayed onは、飲んだのに効いてこない状態のことです。 no onは全く効かない、delayed onはなかなか効かないという状態です。 On-offとは、wearing offと違い、内服時間関係なく急に動けなくなる状態です。 対処は、状況にもよりますが、レスキューとして追加のドパミン投与が必要になることが多いです。 ③のすくみ足ですが、LDOPAやアゴニスト抵抗性のことあり、ドプスや生活環境の工夫が必要になることがあります。
ドパミン関連以外の内服についても見ておきましょう。
ドプスは、すくみや低血圧症に対して出されることがあります。
アーテンは、振戦に効果があることがあります。ただし、認知機能低下の副作用もあるため、高齢者には使いにくいことが多いです。
アマンタジンは、LDOPAを始めるほどではない軽症の方や、ジスキネジアの軽減の目的で出されることがあります。
副作用が出ている場合どうするかについても見てみましょう。 臨床的に問題になるのは、ジスキネジアと幻覚症状です。 ここでは、ジスキネジアについてのガイドラインのフローチャートを見てみるましょう。 まず、ジスキネジアを起こしやすい薬について整理しておくと、LDOPA、MAOB、エンタカポンです。 内服量を減らすとジスキネジアは軽減するでしょうが、運動症状は悪くなる可能性があります。 ジスキネジアが軽度で困っていない場合は、運動症状を優先することがあります。 一方、ジスキネジアで困っている場合は、分割投与を試みて、それでもだめなら、内服を減量したり、アマンタジンを追加します。 ただし、投薬量を減らすと、運動症状は悪くなることが多いですので、ジスキネジアの程度との兼ね合いになります。 若い方で、調整がにっちもさっちもいかない場合は、DBSやLドパ持続投与を考慮します。
副作用が出ている場合どうするかについても見てみましょう。
ここでは、幻覚症状についてのガイドラインのフローチャートを見てみるましょう。
まず、幻覚を起こしやすい薬について整理しておくと、抗コリン薬、アゴニストです。
内服量を減らすと幻覚は軽減するでしょうが、運動症状は悪くなる可能性があります。
幻覚が軽度で困っていない場合は、運動症状を優先することがあります。
一方、幻覚で困っている場合は、アゴニストをLDOPA置換を試みて、それでもだめなら、内服を減量したり、抗精神病薬を追加します。
ただし、投薬量を減らすと、運動症状は悪くなることが多いですので、幻覚の程度との兼ね合いになります。
高齢の方で、調整がにっちもさっちもいかない場合は、デイサービスや社会資源の活用を考慮します。
<外部リンク>
<パーキンソン関係の動画>
0:13 すくみが出現する。止まると次が出なくなる。
・内服に関すること
wearing off(ウェアリングオフ)
DBS治療後の例。1:45~画面左にoff、画面右にonの比較がある。
<内服薬選択のガイドライン(外部リンク)>
①早期:何から開始するか
②ウェアリングオフ:不十分ならどうするか
<Devise治療>
<確認問題>
①何から開始するか
②不十分ならどうするか
③副作用がでたらどうするか
<雑学>
ヒトラーは、晩年、パーキンソン病を発病していたのではないかといわれています。0:30に動画があり、2:19にカルテがあります。
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