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1失語

1)失語の分類

失語の分類の表(外部リンク)


2)失語の実例

イラストで解説(外部リンク)

実例の動画(外部リンク)

1:00 ブローカ失語(中程度)

3:40 ウェルニッケ失語(重度)


2失行

1)失行の分類

①肢節運動失行

②観念運動失行

③観念失行

・失行の上記の分類は、用語が難解に見える。


・では、この3つの失行はどうして、こういう名前になったのか?この分類は、20世紀初頭にリープマンが考えたものである。

用語がむつかしいのは、「着衣失行」のように、「見た目から命名した」のでなく、「リープマンが想定した機序」から命名したからである。

*差し示しているもの自体は、それほど難解ではない。「着衣失行」のように、「できないことで命名」すると、①肢節運動失行>細かい動作失行、②観念運動失行>しぐさ失行(「使うふり」「サイン」を含む)、③観念失行>道具使用失行とでもなる(正式名ではないが)。


・オリジナルの症例が、以下のリンクから参照できる。

オリジナルの症例(外部リンク)

図2に右手に失行がある人のイラストがでている。水差しやブラシを変な使い方をしているイラストがでている。


・リープマンは「ブラシをうまく使えない」症例を見て、失語と、同じ枠組みで理解しようとした。失語では、「聴理解>伝導>発話」のプロセスがあるように、失行では、「観念>伝導>運動」のプロセスがあるのではないかと想定した。

リープマンの病態図(外部リンク)

*失行と、言語の病態図との類似性を見ることができる。


・リープマンの提唱した「観念」というのはむつかしい言葉だが、ここでは、「櫛を使うのはこんなことだ」という「イメージ」のようなものと思えばよい。

さて、リープマンの考えを採用すると、「3観念>2伝導>1運動」の流れに沿って以下のような病態が想定しうる。

1,そもそも細かい運動に問題がある(だが麻痺ではない)

>細かい動作ができない(コインをひっくり返せない)

⇒①肢節運動失行に相当(言語のBroca失語に相当)

2,「櫛を使うのはこんなことだ」というイメージはあるのだが、伝導に問題がある

>「櫛を使うふりをしてください」と言われてもできない

⇒②観念運動失行に相当(言語の伝導失語に相当。「復唱ができない」に意義が近い)

3,「櫛を使うのはこんなことだ」という「イメージ」がない人

>櫛そのものをつかえない

⇒③観念失行に相当(言語のWernicke失語に相当。言語にインプットが入らないように、道具のインプットがあっても使用ができない。)

以上のように分類できる。


・他の分類

なお、失行は失語より機序が複雑と考えられており、リープマン以外にも他の分類やモデルのバリエーションがある。(失行の様々なモデルの紹介・外部リンク

だが、慣例的に、リープマンの用語は今でも使われているので、この用語が残った。


2)失行の実例

動画リンク

観念運動失行(外部リンク)

観念失行を発病した人の体験談(外部リンク)


観念失行のイラスト(外部リンク)


着衣失行(外部リンク)


構成失行(外部リンク)


ドラえもんでわかる失行(外部リンク)

1:20 観念失行、「空飛ぶじゅうたん」を出そうとして、間違った敷物を出しています

1:35 観念運動失行、「のび太君またね」「敬礼してください」に対する反応が変です

*余談ですが、ドラミが出した敷物の道具は、名前がついていたのですが、問題があるということで、削除されたそうです。(封印されたドラえもんの道具外部リンク)


3失認

1)失認の分類

失認の種類(外部リンク)

*「何ができないか」によって、分類され、名前がついているが、半側空間無視が臨床的には遭遇することが多い。

なお、空間失認の、最初の訴えは、「様子がおかしい」「急にぼけた」というもので、本人も家族も、何が変わったのかに気が付いていないことが多い。(「失認」なので、何がおかしいのか自分自身が認識できない。)

しかし、よく聞くと、「道に止まっている自転車にぶつかる」「目の前のコップを探している」という病歴が見つかることがあり、これが空間失認を疑うきっかけになる。

診察室でも、「聴診器の真ん中を触ってください」という診察で簡単に見つけることができる。病態を見つけると、「ああ、そういうことでしたか!」と本人も家族も感心してくれることが多い。


2)失認の実例

半側空間無視の線分消去テスト(外部リンク)

半側空間無視の動画(外部リンク)


*Balint症候群の3徴候

精神注視麻痺:1つのものを見ると視線をかえられない

視覚性失調:周辺視野のものをつかめない

視覚性注意障害:周辺視野に入ってきたものを無視してしまう

用語が大変むつかしいのだが、「注視すると周辺が全く見えなくなる」というのが症候の中心である。

これに、「視覚性=視覚障害原因で」+「失調であるかのような」症状になる、というのが用語になっている。いうならば、「原因」+「●●であるかのような兆候」という命名である。


Balint症候群診察の動画(外部リンク)

0:22 「右手でスプーンをつかんでください」という指示に対して、周辺視野のものがつかめないが示されている(視覚性失調)。これは、「視覚の問題」で、「運動失調のように対象から手が外れてしまう」ので「視覚性失調」と名前が付けられた。

0:40 櫛とスプーンの場所を変えてみている

スプーンと櫛を並べるて何があるかを尋ねることを行っている。2つを並べて、「櫛は見えますか?」「はい」「スプーンは見えますか?」「いいえ」というやり取りをしている。これは、片方に注視すると、もう片方が視野に入ってきても気が付けないことを見ている。「視覚の問題」で、「注意障害のように対象に気が付けない」ので「視覚性注意障害」と名前が付けられた。

岐阜大学の神経内科のページに解説もあります(外部リンク)。