1)臨床分類と、病理分類がある
臨床分類は、大まかに、行動全般のbvFTDと、言語系のPNFAとSDに分かれる。
PNFAが運動、SDが感覚に対応すると理解するとよい。
臨床像と病理像は、「ある程度の」相関がある(PNFAはタウが多く、SDはTDP43が多い。bvFTDは間くらい。)
2) 進行性非流暢性失語 PNFA
喚語ができなくなる。
診察の仕方
非語の読み方を確認する。非語とは、日本語として存在しない言葉のこと。
例:「信景」を読んでもらう。「しんけい」と読んでしまう。
PNFAでは、非語の音読が特に障害 。
語彙理解の障害で非語と実在語の区別ができない症状が出ることがある 。
3)意味性失語 SD
復唱はできるのに、意味が説明できなかったり、意味が分からないというもの。
(復唱はできるので、超皮質性感覚失語に似ている) 提示した線画や実物品を呼称する際には適切な言葉が出ず、語性錯語や「わからない」という反応が認められる。
診察の仕方
①有名なひっかけとしては、会話の途中で、「ところで利き手はどっちでしたか?」「利き手?利き手て何ですか?」となるというもの。
② さらに、比喩的表現を使用する慣用句の意味がわからず、字義どおりの説明に留まる場合
例 腹黒い→「お腹が黒いっていうことですか?」)や、まったく説明できない場合がある。
③日本語における漢字と仮名という2種類の表記では、音と文字の対応が明確な仮名が保たれ、意味との関連が深い漢字の読み書きが特異的に障害される。 書字については、同音だが異義の文字を選択して書く類音的錯書(例:鉛筆→「円筆」)が障害。
④音読では特に「熟字訓」と呼ばれる単語全体を訓読みする熟語で類音的錯読例:案山子(かかし)→「あんざんし」、百合(ゆり)→ひゃくごう、海老→かいろう が認められる。
*熟字訓:通常の読み方とは違って、意味で読む熟字。SDで障害。 海老→かいろう、表層失読、fusiform gyrus、象形文字や表意文字に近い機能と思われる。一方、アルファベットのように音の連結が明らかなものは、残る。
*なお、通常の血管障害などの失語では漢字の方が、残りやすい。逆にかなは障害されやすい。
4)bvFTD
「このクソガキ」など言うなどの暴言は、無礼になるが、異常かどうかは、社会的コンテクストによる。同様に、易怒性や、暴力はかなり非特異的である。
しかし、診断のために重要なのは、派手さより症候であり、「疾患としてとらえられるか」が重要である。
FTDの場合、「無礼さ、反社会性」は ①被影響性、②強制行動、③遂行機能不全 に還元可能になる。
「意味のないことをついついやってしまう」のは、迷惑しないがこういった徴候は、早期からあり、そういう徴候があるかどうかを探すのが重要である。
強制行動の例:ドアをみると開けてしまう
被影響性の例:文字読み上げ、新聞を音読している、メニューを見て「タンタンメンかあ」
また、現象の派手さより、「本来の目的がないのにやってしまうこと」が重要であり、これが遂行機能障害の合併が疑われ、病的意義がある 。(そこに山があるから登った、青信号だから渡った、の感覚に近い)
遂行機能不全を合併している例:風俗へよく行くことや、100万円使ったという派手さより、お金だけ払って風俗嬢と会わずに帰った、友人に麻雀を断られても行く。
例、万引きにおけると犯罪とFTD
①万引き犯は、ニンジンを手に取り、周りに人がいないことを確認して、レジを通らずに立ち去る。
②FTDは、ニンジンを手に取り、顔を上げると出口が見えたので、出てゆく。(たまたま、レジが目に入れば、清算する)
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