A、重症筋無力症(MG)についてみてみましょう。
まず、a、病態ですが、免疫性疾患なので、免疫治療が有効という特徴があります。
原因としては、抗Ach受容体抗体陽性が最多で、Musk抗体やLRP4抗体がこれに続きます。
b、特徴的身体所見としては、いわゆる「易疲労性」があります。
「易疲労性」というのは、単につかれやすい、ということではなく、同じ動作を繰り返していると筋力が低下してくる、ということです。
重症度のスコアリングとしては、MGFA分類、QMGスコアが用いられます。(詳細はリンク先をご覧ください)
重症筋無力症(MG)のc、鑑別のポイントについてみてみましょう。
MGの場合もちいられる検査には、電気生理検査、血液検査、テンシロンテストがあります。
連続刺激(RNS)で、減衰減少(waning)を確認します。
血液検査では、抗Ach受容体抗体や抗MuSK抗体陽性を確認します。
テンシロンテストでは、テンシロンの注射後に眼瞼下垂が改善することを確認します。
胸部CTで、胸腺腫瘍を認めた場合は、外科的治療を考慮します。
重症筋無力症(MG)のd、標準治療についてみてみましょう。
1の対症療法としては、メスチノンの内服があります。これは、テンシロンと同じで伝達物質であるアセチルコリンを増やして症状を改善します。眼球型の場合に用いられます。ただし、原因となる抗体は減らせませんので、効果は限定的なことが多いです。
2の免疫療法が、全身型、改善不十分な眼球型の場合に行われます。
まず、内服として、ステロイドの投与が行われます。MG特有の投薬として、漸増する必要があります。これは、MGはステロイド導入時に、初期増悪といわれる症状の増悪があるためです。
ステロイドにくわえて、免疫抑制剤を併用することが多いです。併用した方が、少量のステロイドで維持できることが多いからです。
3の即効性のある治療が、寛解導入の目的で行われることがあります。IVIGや血漿交換が選択肢としてありますが、簡便性から、IVIGが選択されることが多いです。
重症筋無力症(MG)の治療として、4の胸腺摘出が行われることがあります。
CTで胸腺腫瘍がある場合は、絶対適応となります。
画像上は、胸腺腫瘍がない場合も、若年でAChR抗体高値の場合は、胸腺が残っていることがあり、摘出を行うことがあります。
胸腺の摘出を行うと、MG自体は根治しないのですが、内服でのコントロールが容易になることが多いです。
5のクリーゼについてみてみましょう。
クリーゼとは、MGが感染や外傷、手術といった侵襲性を引き金に急激に悪くなる場合です。呼吸管理、免疫治療が必要になります。
また、胸腺摘出の場合、手術による侵襲が加わるため、あらかじめIVIGなどで治療して手術に臨むことがあります。
なお、以前は、MGのクリーゼは多く、生命にかかわることが多かったため、病名に「重症」という言葉が残ったが、現在は治療の選択肢の多い疾患の一つです。
<外部リンク>
MGFA 重症度分類と、QMGスコアを確認できます。
治療の選択の流れ
プレドニンの漸増、減量
表2に増量の仕方が書いてある
MMSとは、QMG<14
MGについての詳細な解説: enhanced ptosisなどを確認できます
<豆知識>
*以前は、認知度の低い病気でしたが、社会一般に知られるようになったきっかけとして、萬屋 錦之介さんという有名な歌舞伎役者が1980年代の舞台公演中に倒れたことが報道されたということがあったそうです。
興味がある方は、リンク先(外部リンク)をどうぞ。
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